FX取引(外国為替証拠金取引)の仕組みを基礎から振り返る
シリーズ第5回目です。
さて、今回はハイリスクハイリターン商品、FX取引です。
日経を読んでいる方にとっては「ミセスワタナベ」や、「個人投資家の逆張り投資」といった用語を見かけたことのある方は多いと思います。
レバレッジ投資ですのでリスクは格段に上がりますが、逆に海外渡航が多い方にとっては「持たざるリスク」を減らすこともできます。
FX取引って何?
FX取引とは、外国為替証拠金取引{Foreign currency Exchange Transaction}の略称で、ドルやユーロなどの外国通貨を交換・売買することでその為替差益、あるいはスポット金利収入を得ることを目的とした取引です。外為とも呼ばれます。
皆さんも海外旅行に行かれたことありますよね?
海外に行くと日本円は通用しないので、外国通貨、例えばドルに両替をしてドルでお買い物や食事、旅行などを楽しむことになります。
この外国通貨は決済手段としての購入ですが、FX取引は外国通貨を決済手段としてではなく、投資(ときに投機)の目的として行う取引のことです。
FX取引のリスク
第1〜3回で紹介した株式、投資信託、債券といった金融商品と決定的にFX取引が異なるのは、株式などが自己資本を元手にした取引を基本とするのに対して、FX取引はあたかも他人資本を使っているかのように仮想して{これを「レバレッジをかける」といいます。}、自己資本以上の投資対象に対して行う取引だということです。
平たくいえば、100万円の元手があった場合、株式であれば100万円の価値の株式が投資対象の上限になります(※)が、FX取引の場合には2500万円の取引が行えます。
なお、2500万円といったのには理由があって、クリック365の店頭取引の場合、現在はL(=レバレッジを指し、自己資金に対してどの程度の倍率で投資を行っているかを指します)25倍に制限されています(※2)。
したがって、100万円 x L25 = 2500万円までの投資が可能ということになります。
(※)株取引であっても信用取引は可能です。
(※2)海外FX口座では250倍程度にLを設定するところもあり、よりハイリスクハイリターンの投資になります。
さらに、FX取引の損益の基本についても触れておきます。
計算の単純化のため、1ドル=100円と仮定し、投資元本100万円で1万ドルを買う取引を行うと仮定します。
100万円 ÷ SR(スポットレート)100円 = 10,000ドル なので、L=1、つまりレバレッジを一切掛けずに外貨両替したと同じと思っていただいて結構です。この場合、為替スプレッド(業者への手数料)やスワップポイント(金利)を度外視すれば、損益は以下のようになります。
(計算例①:利益が出る場合)
100円で買って105円まで上昇
1万ドルを買う取引で考えてみましょう。
この場合、為替が5円円安に振れているので、5円×10,000ドル=5万円の為替差益。つまり利益が出たことになります。
(計算例②:損失が出る場合)
100円で買って95円まで下落
一方、100円で10,000ドル購入していたものが、1ドル95円まで下落してしまった場合はどうでしょうか?
この場合は、反対売買して円に戻したとしても95万円しか戻ってきませんね。
つまり、-5円×10,000ドル=-5万円の為替差損。損失が出てしまったということになります。
どうでしょう?意外と簡単に感じませんか?
金融はとかく用語が複雑で数字も細かいのでとっつきにくいことが多いですが、単純化した例で本質をしっかりつかむことが大事です。
たとえば2つ目の例で、為替が円高に振れると予想していたなら、外貨を買うのではなく、外貨を売る(これを金融用語で「ショートする」といいます)取引から入ることもFX取引では可能です。
この場合、95円まで下落したところで外貨を買い戻せば、1つ目の例と同じ5万円の利益を稼ぐことができるわけです。
さらにFX取引はレバレッジを25倍まで掛けることが可能ですから、例えば上の例でL=10で取引を行った場合、5円の値動きで50万円の利益または損失になるわけですね。
実際にはこれに為替スプレッドやスワップポイントも入りますし、通貨ペアもドル円だけでなく、ユーロ・円やユーロ・ドルなど、組み合わせによって無数に及びます。
損失が大きくなった場合にはロスカットや追証などが発生したり、計算は複雑になります。
FX取引のメリットは?
FX取引は投機なので、メリットを一概に語るのは難しいです。
FXはある種博打のようなもので、一方が得をすればもう一方は損をする。いわばゼロサムゲームの世界です。
2016年6月のブレグジットの際にはイギリスポンドが対円で急落しましたが、自分はあの時数十万円の利益を手にすることが出来ました。
他方、とある友人はブレグジットが起きない方に掛けていたようで、100万円近くを一晩で失ってFX取引から退場になってしまったと聞きました。(私が利益を上げたのはもちろん本人には伝えていません。)
レバレッジ投資ですので、 自分の予想と思わぬ方向に相場が動くと、思ってもみなかった痛手を被ることもあります。
ひとつ初心者にもお勧めなのは、レバレッジを掛けずに取引を始めてみること。
例えば1ドル100円の時なら、100万円を入金すれば1万ドルの取引が可能です。
レバレッジを掛けずに取引をすることに意味があるのかと思われそうですが、大きなメリットが2つあります。
メリット1:FX業者はスプレッドが極小のため銀行よりも良いレートで外貨両替ができること
→下で紹介する現渡可能な業者と取引すれば、海外旅行の際にとても役立ちます
メリット2:外貨の方が金利が相対的に高いため、スワップ(金利)狙いの取引が出来ることです。
→円預金につく金利は見るべくもありませんが、外貨であれば数%程度の金利を稼ぐことが可能です。
(もっとも、スワップ金利以上に円高が進めばトータルでロスになる可能性はあります。)
FXの取扱業者のおすすめ
FX取引は店頭取引で登録制です(許可制ではない)ので、数多くの業者が乱立しているのが実情です。
初心者の方が取引を行うのであれば、やはり大手の業者から始めるのがよいと思います。代表的な業者を3つ取り上げます。
YJFX!(ワイジェイFX) ←現受・現渡可能。
ヤフーグループのFX業者。「YJFX!アカデミー」など初心者サポートも充実。
香港ドルは1万通貨単位、その他の通貨は1,000通貨単位での通貨交換(現受・現渡)が可能。
マネーパートナーズ←現受・現渡可能。
FX初心者にも上級者にも、安心と信頼のマネーパートナーズ | FX・証券取引のマネーパートナーズ -外為を誠実に-
親会社は東証一部上場企業(証券コード8732)。財務安定性は業界トップクラス。
現受・現渡可能。トラベレックスを使えば空港で外貨の受取もできる。
GMOクリック証券
https://www.click-sec.com/corp/ad/fx/fx_b/index.html?aid=fs1e267
東証一部上場企業GMOインターネット(証券コード9449)のグループ企業。
18通貨ペアのほとんどが業界最小水準のスプレッド。株取引のための証券口座も同時に保有可能で証券投資口座をワンストップで保有可能。
ちなみに私はFX取引を7年ほどやっていますが、最初はマネーパートナーズに口座を開きました。そこから「みんなのFX」や「ヒロセ通商」などいろいろな口座を渡り歩きましたが、いまは「外為オンライン」を主に使っています。
まとめ
さて、最後に本日のまとめです。
- FX投資の本質は「投機」。ゼロサムゲームのハイリスクハイリターン。
- レバレッジ1倍(L=1)の取引で業者によっては外貨の購入に利用可能。
こんな人におすすめ
- 株や投資信託の値動きは物足りない。
- ハイリスクハイリターン、かつハイスピードで勝負したい。
- レバレッジを掛けずに外貨の購入に利用したい。
編集後記
私個人が本格的にFX取引を始めたのは2009年のリーマンショック後でした。
当時はまだレバレッジが50倍の時代で、それより以前はL=250、つまり250倍まで許容している業者もありました。
それが投機性を引き下げる狙いで2011年8月1日から25倍に引き下げられたのは、おそらく2011年3月の東日本大震災後の急激な円高で大きな損失を被った個人投資家が多かったことが一因にあると思います。
私自身も実は2度ロスカットにあったことがあります。
ナンピンを掛けてポジションを膨らませていったものが暴落して、朝起きるとポジションが強制決済されたのです。
朝メールを開くとFX取引業者から数十通のポジション決済を知らせるメールが来ていて、文字通り肝を冷やしました。
レバレッジを掛けるとはてこを掛けることを意味しており、小さな力(つまり資金で)で大きな岩(つまり大きな通貨)を持ち上げる(取引する)ことを意味します。
でもそれは諸刃の剣で、一度てこが「壊れて」しまうと、自身の手元にその大きな岩が転がり落ちてくることになりかねません。くれぐれも慎重な取引を心掛けたいものです。
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