【アメリカ駐在員向け】2018年個人所得税の税制改正項目まとめ
Kenji(@sorakoge)です。
今日のエントリはアメリカ駐在員向けです。
2017年のトランプ税制改正項目は30年ぶりの大改正とも言われていますが、今日はそのうち個人所得税に関する部分をまとめてみました。
アメリカの確定申告書事情
まず基本の基本からおさらいしておきましょう。
日本では「年末調整」という制度があり、給与・退職金以外に収入がない方は、年末調整によって勤務先が年の最後に給与等の支払いをする際(通常12月)に年税額=源泉徴収税額になるように差額を精算してくれていました。
翻って、アメリカはどうかというと、このような「年末調整」という制度はありません。
移民国家でさまざまなバックグラウンドを持つ人がいたり、あるいは自営業で源泉徴収制度の対象になっていない人が多いなどの理由があるのだと思いますが、サラリーマンも給与の支払いの際に源泉徴収のテーブルに沿って税額を差し引かれることはあってもそれでおしまい!確定申告は個々人で毎年行います。
このアメリカの個人の確定申告書のことは「Form 1040」と呼ばれます。
駐在員によっては会社が個人のTax Returnを代行してくれる人もいると思いますが、残念ながら私にはそのような福利厚生はついていません。
改正が通る前までは上院・下院案がぱらぱら記事になっているのを見つけたのですが、いざ法案が通ってからは意外とまとまった記事がないことに気づきました。
法案が通ってしまうと、もう過去のものなんですね。。
もっとも、実際に改正が影響するのは2018年以降の申告からなので、まだあまり人々の関心を集めていないのかもしれません。
来年の今頃バタバタしているのが目に浮かぶようです。
個人所得税の改正項目
全てはカバーしきれないので、主要項目のみ概要を纏めてみたいと思います。
大きな改正項目は以下の表のとおりです。
では次に各項目について、掘り下げてコメントしてみます。
税率区分の変更
まず税率の変更についてです。
累進税率の区分(ブラケット)の簡素化が叫ばれていましたが、結局7つのブラケットが維持されることになりました。
税率区分は改正前後で見た方がわかりやすいので、表の形でまとめました
ニュースで聞いていてご存知の方も多いと思いますが、トランプ税制改正は富裕層重視だとよく言われています。
その理由の一端がこの税率で、50万ドル以上のUpper class向けの税率(単身者)が37%に引き下げになった他、ブラケットそのものも42万ドルから50万ドル(夫婦合算なら60万ドル!)超に引き上げられました。
もっとも一般庶民に恩恵がないということでもなく、大半の駐在員は22%か24%の税率ブラケットに収まりそうですので、税負担が軽減されると思います。(このあたりは支持基盤のLabor層向けのアピールも巧みに織り込んでいますよね。)
ただし、日本から駐在で来る人は、初年度に外国税額控除が取り切れない人も出てきそうですね。
標準控除の倍増と人的控除の縮小
標準控除額(Standard Deduction)がほぼ倍増します。
具体的には、単身者は12,000ドル、夫婦合算申告(MRJ)の場合24,000ドルになります。直近3年間のStandard Deductionは以下のとおりです。
その代わり、従前の制度では人的控除(扶養控除)が一人当たり4,050ドル認められていましたが、この控除がなくなります。
日本も平成30年度税制改正で基礎控除が10万円引き上げられましたが、さすがアメリカ、スケールが違います。
扶養控除がなくなるのは、やはり共働きが当たり前になった現代の潮流なのかなと思います。
AMTの維持
代替ミニマム税(AMT)の廃止が叫ばれていましたが、法人税と異なり個人所得税ではAMTが維持されます。
ただし、AMT控除額がMFJの場合109,400ドル、MFJ以外では70,300ドルとより高くなるため、実際にAMTが適用される人は更に減りそうです。
項目別控除の廃止または縮小
項目別控除(Itemized Deduction)について、いくつかの項目が廃止または縮小されいます。
住宅ローン控除関連
住宅ローン利息の控除上限が現在の100万ドルから75万ドルに削減されます(MFJの場合)。既に所有している住宅については新法令の適用が除外(Grandfather)されます。
また、住宅を担保とした借入(ホームエクイティローン)の利息控除は撤廃されることになりました。
2つ合わせて、不動産業界で働く方にとっては売り文句が減って向かい風になりそうです。
医療費控除
医療費はAGIの10%超過分が控除の対象になっていましたが、この足切限度額が7.5%に引き下げられます。
もっとも、医療費控除は日本と違って(日本は所得控除で足切限度額は10万円)項目別控除のひとつですので、倍増した概算控除を取る人が大半で、医療費控除が使われる機会はますます減りそうな気がします。
なお、この措置は時限立法で2019年以降は再び10%に戻ります。医療費控除の内容についてはは、過去のエントリでも触れました。
地方税の税金控除
従前、地方税や固定資産税をItemized Deductionとして無制限に控除可能でした。
これが改正後は、地方税・固定資産税・売上税の合計額に対して1万ドルの控除限度額が設定されます。
海外赴任者でもこの地方税の税金控除でItemized Deductionを選択していた人はいらしたと思いますが、打撃になりそうです。
もともと納税者の大半は概算控除を適用していますが、この改正もあいまって、さらに概算控除を選択する人が増えそうですよね。
税額控除関連(子女控除)
続いて税額控除についてです。
従前、Child Tax Credit(子女控除)として、17歳未満の子ども一人当たり1,000ドルの税額控除が認められていましたが、これが2,000ドルに増額されます。
ただし、40万ドル以上の高額所得者(MFJの場合)は控除額がカーブアウトにより逓減されます。
その他
上記に記載したもののほか、私が気になった項目は以下の通りです。
✔引越費用控除の廃止
→もともとAbove-the-lineで控除可能でしたが、今後は控除不可になります。
特にご自身で転職してアメリカに来られる方には大きな打撃になりそうですよね。
✔遺産税・贈与税の基礎控除引き上げ
→2017年5.49百万ドルとされていた基礎控除が、2倍の10百万ドルに引き上げられます。
遺産税の廃止を謳っていた政策からは後退しましたが、日本の相続税の基礎控除引下げ(増税)とは真逆の動きですね。
富裕層偏重と言われればそれまでですが、アメリカにマネーを引き付ける効果がありそうです。
まとめ
今日は私自身の来年以降の備忘も兼ねて、アメリカの個人所得税の改正について纏めてみました。
もっとも、とりあえず2017年のForm 1040に取り掛からなければいけません・・・
私はTurbotaxで申告を作成し始めました。
私のリファーラルリンクからの申し込みで20%OFFになるはずですので、よろしければお使いください。
なお、法律そのものを確認したわけではありませんので、来年の税制については最後は必ずご自身で確認してくださいね。
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